【おやつの時間】手前の一番左がサリーさん、奥で後ろを向いているのがチャッピー(サリーの妹)と息子のポピー、その右がジプシー(サリーの母)とユリー(サリーの娘)
運動場にまいてある牧草の種を掘り出して、芽が出る前に食べてしまうサリーさん
 食事の他に、おやつとして木の枝が運動場に投げ入れられます。園内にある、カシ、ヤマモモ、クワ、ネズミモチなどの枝です。動物園のオランウータンは、退屈すると、手のひらを顔の前に持っていって、噛むような仕草などをします。常同行動と呼ばれ、貧乏ゆすりのようなものだそうです。なるべくこういう行動が出ないように、おやつが差し入れられるのです。
 建物の屋上でおやつの準備が始まると、サリーさんは長い右手を高く伸ばして、まるで
「おーい、こっち、こっち」
と、合図しているみたいでした。このときは、枝が豊富にあったので、もめごともありませんでしたが、サリーさんが、自分の分を先に食べ尽くしてしまうと、奪い合いが始まるのだそうです。
 あの、食欲旺盛だったサリーさんが、あっけなく亡くなってしまったなんて、今でも信じられません。


すこしだけ、ナナちゃんのこと

 実は、顔見知りの(もちろん一方的にですが)オランウータンの訃報は、これで2度目です。
 10年ほど前、愛媛県のとべ動物園に、ナナちゃんという、まだほんの幼いメスのオランウータンがいました。こちらの方は、スマトラ・オランウータンだったと思います。
 自分でそうしたのか、ジュースの紙パックをきれいに開いたものを持っていました。それをなめたり、片手で高く掲げたり、頭にかぶったりして、ひとりで遊んでいました。人なつこい子で、近づくと寄って来ます。ほんとうにあどけなく、可愛らしかったので、冗談半分で、
「それ、ちょうだい」 と、手を出してみたところ、ナナちゃんは、その紙パックを、ケージ越しに差し出してくれたのです。いっぺんにナナちゃんのファンになってしまいました。
 ところが、数年後、大きくなったナナちゃんに会うのを楽しみに、とべ動物園を訪れると、ナナちゃんの姿が見えませんでした。名札もはずされています。ショックで、係の方にお訊ねする勇気もないまま、帰って来てしまいました。
 事情をお伺いすることができたのは、ずいぶん後になってからでした。
 お話では、ナナちゃんは、ドイツのシュトゥットガルトで生まれ、人工保育されていた子で、3歳の時にとべ動物園に来たのだそうです。一度無事に子どもを生んだけれど、そのあと体調を崩し、糖尿病のような状態になって、出産後2年ほどで、治療の甲斐なく最後は肺炎で亡くなってしまったのだそうです。うすうす予測はしていましたが、哀しい結末でした。
 ナナちゃんの生んだ子は、リリーちゃんと名付けられました。ナナちゃんがお乳をあげなかったために、人工哺育で育てられ、元気に成長しました。来年6歳だそうです。お天気の良い日には、園内をお散歩していることもあるそうです。ただ、もうだいぶ大きくなってしまったので、お散歩やお誕生会もそろそろ難しいかなぁと、おっしゃっていましたが、お近くの方はぜひ会いにいらしてみてください。

 という訳で、次回は、オランウータンの聞きかじりプチ講座と、サリーさんのお母さん、ジプシーさんの波瀾万丈について、書いてみる予定です。
(2001年12月19日up)
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