たったの8羽!?
カンムリシロムク

 インドネシア・フェアといっても、ガムラン音楽の夕べでも、フード・フェスティバルでもありません。
 この夏、ズーラシアで開催されていたインドネシア・フェアでは、ウンピョウや、オランウータン、前回書いたマレーバクなど、インドネシアから来た動物たちに、スポットライトが当てられていました。
 カンムリシロムクは、ヒヨドリほどの小さな鳥ですが、気性が荒く、なわばり意識の強い鳥です。普段はあまり目立ちませんが、バリ島固有の鳥なので、フェアの一環として、ケージの前に大きな説明パネルが立てられていました。
 この鳥も絶滅が心配されている生き物です。1960年代にペットとして輸出され続けたために、野生のものは20羽程度しか生き残っていないと、従来から言われてきました。ところが、この説明パネルを読んで驚いたことに、今年6月の、インドネシア政府の発表では、わずか8羽しか確認されていないと言うのです。
 現在、世界中の動物園で、約1,500羽が飼育されており、インドネシア政府や動物園、自然保護団体が協力して、保護、繁殖計画が進められています。日本でも、従来から横浜市の野毛山動物園で、血統管理、保護繁殖を行ってきましたが、現在は、ズーラシア併設の繁殖センターに40羽ほどが移されて、飼育されています。
 残念ながら、保護、繁殖活動も、あまり順調には進んでいないようです。1990年に初めて、アメリカ生まれの個体を野生に放したそうですが、その後、密猟で数を減らしてしまったそうです。
 日本でも、卵は孵るものの、親鳥が雛を巣外に放り出してしまうことも多く、その場合、あえて人工育雛で育てないようにとの、北米動物園協会の勧告もあり、また実際、小型の鳥類の人工育雛はとても難しいので、昨年まで、人工育雛の成功例はありませんでした。
 繁殖センターでは、去年8月に、巣から放り出された赤裸の雛2羽を、放っておくわけにもいかず、人工育雛を試みたところ、初めて成功し、現在、2羽とも元気にケージの中を飛び回っているそうです。何はともあれ、ほっとするお話です。
 ただ、こうして育てられた雛が成鳥になって、繁殖し雛を育て上げることができるかどうかは、何とも言えません。また、日本生まれのカンムリシロムクは、暑さに弱いそうで、平均気温25度のバリ島に帰ることができるのかどうかもわかりません。
 前途は多難ですが、この小さな鳥に、何とか生き延びてもらいたいと願っています。
(2001年9月30日up)
インドネシアの仲間 オランウータンとウンピョウ
5へ   7へ   みちくさ動物園案内板   TOP