サリーさんの突然の訃報

 オランウータンのことを書こうとした矢先に、東京都多摩動物公園のサリーさんが亡くなってしまいました。12月4日のことです。ボルネオ・オランウータンのサリーさんは、この動物園で生まれて、今年で33歳でした。HPによると、第4子がお腹にいたそうで、死因は現在調査中とのことです。
 サリーさんとは、ほんのひと月前にお会いしたばかりでしたので、大変驚きました。そのときはとてもお元気そうだったのに。ご冥福をお祈りします。
 サリーさんは他の誰よりも食いしん坊でした。
 ここの運動場には、蜂の巣を模した壺が設置されていて、凍らせたリンゴかオレンジのジュースが、中に入っています。穴は小さいので、直接なめることはできません。笹の枝が差し入れられると、オランウータンたちは、それを受け取ってそれぞれ壺に向かいます。小さな穴から枝を差し込んで、それにふくませたジュースをなめるのです。ジュースをなめながら、枝を噛んで繊維をほぐし、さらにジュースが浸みやすくします。
 野生のオランウータンで、道具を使用した例は観察されていないそうですが(※)、こちらでは、何も教えなくても、自然に自分たちでそうするようになったそうです。
 サリーさんは、自分の場所のジュースが少なくなると、別の穴へ移動します。他のメンバーは、サリーさんが近づくと場所を譲るようです。そうしてしばらくすると、また、他のメンバーがなめている場所が良さそうに見えるのか、横取りしに行きます。
 食事は、1日1回、夕方それぞれが個室に入ってから与えられるそうです。そうしないと、サリーさんが全部独り占めしてしまうそうです。メニューは、バナナ、ミカン 、リンゴ、ニンジン、コマツナ、食パン、煮干し、ゆで卵などです。バナナやミカンは、指とやわらかく動く唇を使って、皮をむいて食べます。ただし、その皮も、結局最後には食べてしまうのですが。ゆで卵も、皮をむくことはできるそうですが、排水溝が詰まってしまうので、現在は、むいた卵を与えているそうです。煮干しは、ちゃんと頭を取って食べます。
 それぞれ食べ物の好みや、食べ方が異なり、好きな物から食べる者もいれば、好きな物は最後に取っておく者もあるそうです。サリーさんは、ミカンが大好きで、真っ先に手を伸ばします。しばらくミカンを食べると、今度は食パンを取り、足の指でキープします。どうするのかと思うと、ミカンを口に入れては、食パンをすこし食べ、またミカンを食べては食パンをかじります。味が混ざっておいしいのでしょうか。サリーさん、コマツナはお好きではなかったようで、このときは最後まで手を出しませんでした。

(※2002年1月にNHKで放映されました番組「ときめき!大自然」の中で、野生のオランウータンが、小枝を折り取って果実の種をほじくり出している例が報じられていましたので、訂正いたします。)
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