聞きかじりオランウータン講座

【オランウータンの生態】
 オランウータンは、アジアで生き残っている唯一の大型類人猿です。化石によれば、もともとはアフリカで誕生し、その後アジアに広がりました。かつては、東南アジア全域と中国の一部にまで分布していましたが、現在では、ボルネオ島とスマトラ島にのみ生息しています。
 樹高が50〜60メートルにもなる熱帯雨林に棲み、ほとんどの時間を地上20〜30メートルの樹上で過ごします。地上はヒルがいる湿地です。食べ物は、ドリアン、イチジクなどの果物が全体の60パーセント、その他には、若葉、新芽、樹皮など、また野生では、昆虫や小動物なども2パーセント程度食べているようです。
 10歳くらいで大人になり、寿命は40〜50年と言われています。体重は、メスで40〜50キログラム、オスは60〜130キログラムになりますが、飼育下では、もっと大きくなるようです。オスは成熟すると、フランジと呼ばれる頬垂と顎ヒゲを持つようになり、のどの下の共鳴袋が目立ちます。
 半単独性で、メスはまだ独立していない子供と一緒に暮らします。成熟するとオスは放浪し始め、メスは母親の行動圏と重複する形で自分の行動圏を確立します。オランウータンのメスたちは、以前信じられていたようにいつでも単独で居るわけではなく、数組の母子ペアが、一緒に移動したり採食したり、かと思うと母親同士突然喧嘩したりすることもあるそうです。一方オスは、完全に排他的です。共鳴袋を使ったオスのロング・コールは、自己宣伝のためのもので、暗く濃い森の中で性的に受け容れ可能なメスに自分の居所を教えるとともに、オスの競争相手に近づかないよう警告するのだそうです。一連の低いうなり声で始まって、騒々しい叫び声に急変し、1〜4分続くものだそうですが、多摩動物公園の動物解説員の方は、一度も聞いたことがないとおっしゃっていました。
 野生のメスは、14〜15歳で最初の子を生み、以後8年間隔ぐらいで出産するそうです。子どもは5歳くらいまでは、ときおり乳を飲み、夜は母親が作った寝床で一緒に寝ます。オスの子は7歳くらいになると親離れを強要されますが、メスの子は、それほど決定的に追い出されることはありません。その頃には下の子が生まれ、メスは母親を見て授乳や育児を学ぶようです。
 飼育下では、10歳ぐらいで初産の例もありますが、幼いうちに母親から離された個体が多いためか、授乳拒否や育児拒否が頻繁に見られます。出産間隔も野生の場合より短いようですが、繁殖のために、意図的に早く子離れさせた例もあったようです。
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