「モモタロウ」くんの誕生までには、いくつかの哀しいお話がありました。
 まず、1994年11月に、多摩動物公園から上野にやって来た、28歳の雄サルタンは、力ずくで雌たちを威圧しようとしたために、逆に雌たちから総スカンを喰ってしまい、繁殖計画は失敗しました。
 1997年12月に、イギリスから10歳で連れて来られた雄のビジュは、雌たちの扱い方が上手で、とくに、11歳のゲンキと親しくなり、交尾も確認されましたが、どういう訳か妊娠には至りませんでした。
 そのため、1999年7月に、モモコという16歳の雌が、千葉市動物公園から、新たに連れて来られました。モモコは、すぐにビジュと親しくなりました。ところが、そのことが、ゲンキの心を傷つけてしまいました。ゲンキは食欲を失って痩せ細り、自分の指を自傷するまでになってしまいました。そして結局、生まれ故郷の京都市動物園に帰されました。
 一方、ビジュとモモコについては、1999年10月、交尾が確認されましたが、その直後に、ビジュが急死してしまいました。吐瀉物をのどの詰まらせたためだったと記憶しています。
 その年の12月になって、モモコが妊娠していることが判りました。そして2000年の7月3日に産まれたのが、「モモタロウ」くんです。つまり、「モモタロウ」くんは、ビジュの忘れ形見という訳です。
 暖かくなったので、「モモタロウ」くんの一般公開が再開されています。まだ小さくて、母親のモモコにしがみついていることが多いようです。元気に成長してくれることを祈っています。と同時に、京都に帰ったゲンキの心の傷が癒え、一日も早く、その名前通りの元の陽気なゲンキに戻ってくれることを願っています。
(2001年6月21日up)

<2002年4月23日追記>
 昨日の毎日新聞夕刊で、ゲンキのその後の様子が報じられていました。京都市動物園では、当初個室でリハビリを試みたものの、自傷行為が止まらなかったそうです。ひとりでは立ち直れないと判断し、昨年1月から母親のヒロミと同居させたところ、自傷行為が止まり、生理が復活し、一時40キロも激減していた体重も、元に戻りつつあるようです。

上野動物園の現在のメンバー 雄:「モモタロウ」くんを含めて3頭 雌:5頭
ビンドンの部分が光ってしまって見えませんが、右上に3頭並んでいる写真の左端がビンドンです。
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