カグーに再会しました。飛べない鳥というと、ダチョウやキウイ、あるいはニワトリなど、ずんぐり丸い体型を想像してしまいますが、カグーは、ハトのようなスレンダーな体型で、飛べないようには見えません。
 非常に美しいブルーグレーの羽に、赤い目、頭には飾り羽もあり、大きさはニワトリくらいでしょうか、とても綺麗な鳥です。
初めてカグーに出会ったのは、去年の夏、横浜市の繁殖センターの体験講座でした。カグーは、ニューカレドニア固有の鳥で、国鳥になっていますが、生息地に2000羽程度しか残っておらず、絶滅が心配されています。ニッケル採掘のための森林伐採や、飛べないために補食されて、数を減らしてしまったそうです。
 ミミズ、ケムシ、クモなどを食べ、卵は1回に1個だけしか産みません。地面の落ち葉の上に巣を作るので、雛は落ち葉の色をしています。雌雄は外見ではわかりませんが、鳴き声で区別できるそうです。家族で移動しながら生活し、兄姉が、子どもの面倒を見るのだそうです。なわばり意識が強いので、録音した鳴き声を聞かせると反応するとのことでした。
 原産地ニューカレドニアでは、保護区を設定して、野生の状態で繁殖を図っています。1989年に、初めてニューカレドニア政府から、横浜の野毛山動物園に、1つがいが贈られ、これまでに10羽が繁殖、生育したそうです。この写真は、上野動物園の2羽で、野毛山生まれです。日本の他には、アメリカのサンディエゴ動物園に1つがい、ドイツに2つがいがいるだけだと聞いています。それぞれの施設で、繁殖が順調に進むことを願います。
 ただ、気になることもあります。繁殖センターの係の方のお話では、人前にひょこひょこ出てくる個体は、人工的に育てられたもので、野生で育ったカグーは、人前に姿を現すことはないそうです。そうしたことを考えると、これから先、個体数が増えたとしても、すぐに野生に放して万歳という訳にはいきません。
 前回、類人猿について書きましたが、チンパンジーを例にとると、子どもの頃から人に育てられたチンパンジーは、生まれ故郷に帰されたといっても、自然の森の中に設えられた、人工的な施設に頼って、生きるのが精一杯だとも聞きました。また、野生のチンパンジーには見られない育児拒否が、飼育下のチンパンジーでは、50パーセントの頻度で、発生するとも聞きます。
 人が壊してしまったものの重大さに、心が痛みます。
(2001年5月22日up)
飛べない鳥「カグー」
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