ここでは、動物にまつわる話をあれこれ書いて行きたいと思います。
 まず手始めに、「大型類人猿の権利宣言」という本を読んで、思ったことを書いてみます。

 この4月に出版されたこの本は、1993年にイギリスで出版されたものの翻訳です。《大型類人猿についての宣言》と、その共同提言者である第一線の研究者の方々の寄稿文からなっています。
 宣言の冒頭には、
「われわれは平等なものの共同体を拡張して、この中にあらゆる大型類人猿、すなわち人類、チンパンジー、ゴリラ、オランウータンを含むようにすることを要求する。」
とあり、平等なものの共同体に対して認められるべき原則、権利として、
 1 生存への権利
 2 個体の自由の保護
 3 拷問の禁止
を挙げています。
 つまり、これら大型類人猿の間には、生物学的にも心理的にも、何ら線引きすべき根拠が見当たらないということを実例を挙げて述べた上で、従って、チンパンジー、ゴリラ、オランウータンに、人類と同じ基本的人権を保障すべきだという主旨です。

 現在、日本で暮らしている370頭あまりのチンパンジーのうち、3分の1強が製薬会社にいることを思うと、この宣言が広く受け容れられて、自分の意思と無関係にその身を供するチンパンジーたちが、出来る限り苦痛から解放され、すでに役目を終えたチンパンジーたちが、その長い余生をストレス無く穏やかに暮らせる方向に進むことを願います。

 ところで、ここで気づくのは、「類人猿だけでいいの?」ということです。この本では、共同執筆者の中にも、道徳上平等な扱いを受けるべきものの範囲をもっと拡張すべきだと考える方がいらっしゃることをことわった上で、それは、この宣言の目的とはしないと明記されています。一朝一夕に結論の出ない議論を続けて、時間ばかり過ぎてしまうよりも、どこかで線を引いて、出来るところから先へ進もうとする考え方は、よく理解できます。
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