2月11日建国記念の日に、よこはま動物園ズーラシアでインドライオンのオスの赤ちゃんが誕生しました。ライオンに必要な広い飼育スペースの確保が難しいため、2000年以降繁殖を控えてきましたが、インドライオンは日本ではこれまでズーラシアで7頭、上野で4頭が飼育されているのみでたいへん希少であることと、日本で唯一繁殖経験のあるオスのヨハンくんが12歳と高齢と呼ばれる年頃にさしかかってきたことなどから、8年ぶりの繁殖となりました。
母親はウーマさんです。2頭生まれたのだそうですが、1頭はお乳を飲むこともなく亡くなり、1頭もお乳は飲んでいたものの体温が低下し鳴き声もか弱くなってきたため、人工哺育に切り替えたそうです。
生まれた当初1,100グラムほどだった体重も現在は5,300グラム、まだ足腰がしっかりしていない感じですが、顔立ちはライオンらしくなってきました。飼育さんの間では今まで便宜上「建国記念のケンちゃん」と呼ばれていたそうですが、愛称も三択投票で正式に「ラージャー」くんと決まりました。ヒンディー語でもマレー語でも「王者」という意味らしく、横浜市繁殖センターには「ラージャ」という名のマレーバクがいますし、インドネシアのクタイ国立公園にも「ラジャー」と呼ばれている大きな野生のオランウータンがいます。「ラージャー」くんもでっかいでっかい風格のあるオスライオンに育ってくれるよう願っています。
インドライオンのオスは父親のヨハンくんと上野にいる異母兄のモハンくん、それに今回生まれた「ラージャー」くんの3頭しか日本には居ません。まさに期待の星なのですが、この家系しか居ないとなると将来のお嫁さん探しも、うーん、どうなるのでしょうか?
ズーラシアでは、5月3日まで毎週金曜・土曜の14:00から20分程度、「ラージャー」くんに会うことができます。
生まれてくるライオンも居れば、去っていくライオンも居ます。「ラージャー」くん誕生の1ヶ月後の3月11日、長年にわたり野毛山動物園に君臨していたモドリくんが老衰のため亡くなりました。1984年7月生まれの23歳8ヶ月は日本最高齢だったそうです。私は、お正月に眠っている姿を見たのが最後になってしまいました。内臓はまったくきれいで、本当に天寿を全うされたのだそうです。
千の風ではありませんが、モドリくんの咆哮は父祖の地アフリカの空を吹き渡っていることでしょう。モドリくんが再びライオンとして生まれ変わった日にも、豊かな緑の草原を駈け、風の匂いを確かめることができるように、そう努めることが私たちにできるモドリくんへの恩返しだと思っています。
明日4月6日まで、モドリくんの介護の様子などのパネル展示と献花、記帳が行われています。モドリくんの寝室も亡くなったときのままに保存されていました。
野毛山動物園では、最長老だったアンデスコンドルのアンディくんも昨年3月に亡くなっています。世代交代ということなのでしょうが、古くからの知り合いがひとり、またひとりと消えていくのは寂しいものです。(2008年4月5日up)