【講演会のご報告】
つい最近新聞で、ボルネオ島で2500頭の群が新たに発見されたと報じられていたことから、明るいお話が伺えるのでは、と期待しての参加でしたが、結論から言えば、この情報は残念ながら極めて信憑性が疑わしいとのことでした。この発表では根拠が示されていないうえ、発見があったといわれる地域は、1997、98年に鈴木先生が調査なさった際も2個の巣が確認されたのみで、地元の人に聞いてもそんな数のオランウータンが生息しているとは思えないそうです。情報源のNGOが、活動資金を確保する目的でセンセーショナルな発表をしただけだとしたら哀しいことです。
鈴木先生は11月のボルネオ島調査から帰国されたばかりで、最新のスライドとビデオをまじえて現地の状況をお話しいただけたのですが、7月に伺ったお話に比べ、森の保全がさらに難しくなっているように感じました。
国立公園とそのすぐ北側に隣接する石炭採掘地の間には、バッファーゾーンの森が残されています。石炭会社との合意で、この10年間守られてきた森ですが、今回の調査では、そこに人が入って畑を切り開き、家まで建っていたそうです。
また、土地を高値で買い取ってもらうためだけに、わざわざ森を伐採してコーヒーの苗を植えるということも行われているのだそうです。
良い森が残されていた奥地でも、かつて許可を取って伐採を行っていた会社が撤収し、検問所も廃止されたため、盗伐がどんどん進んでいるとのことです。
盗伐グループの多くは出稼ぎや移住者のようです。
盗伐が多発する背景にはインドネシアの国内事情があります。政権交代後、「国のものを民衆に返せ」という考え方から、一般の人が森の木を切り出したり、地方の自治権が尊重されるようになって中央の意向が地方に及びにくくなったこと、また、いわゆる収賄で、国立公園や警察が盗伐を取り締まれないなどの事情を説明していただきました。
(次ページへ)