【密猟と象牙】
ケニアのツァボ国立公園は、かつて密猟最前線と言われた地域です。ゾウの密猟があとを絶たなかったのは、象牙の需要が供給量を大きく上回っていて、密猟者や密輸業者に、リスクに見合う以上の大きな利益をもたらしたためです。1980年代、日本一国で、世界で生産される象牙の4割以上を消費したと言われています。10年間に輸入した未加工象牙だけでも3000トン、アフリカゾウの30万頭分以上に当たるそうです。
1989年スイス、ローザンヌでの第7回ワシントン条約締約国会議で、アフリカゾウは、原則的に商業取引禁止となる附属書Tに格上げされました。以降、象牙の国際取引は禁止されてきました。象牙価格の暴落で、密猟は明らかに激減しました。
一方、ケニアなど観光収入が大きい国とは対照的に、南部アフリカには、立地的に観光に適さず、やせた土地に植えた自給用のわずかばかりのトウモロコシとヒエを、ゾウの集団に食い荒らされて困っている村があるのも事実です。
南アフリカ諸国はアフリカゾウの個体数が増加していることを理由に、この地域に限って、原産地の輸出許可証があれば商取引可能な、附属書Uへの格下げを求める提案を繰り返し、1992年第8回京都会議、1994年第9回アメリカ会議と、次第に「持続可能な利用」を認める流れに傾きました。
1997年第10回ジンバブエ会議で、ボツワナ、ナミビア、ジンバブエ産について附属書Uへの格下げが認められました。これを受けて、日本に対してのみ一回限りの試験的な取引を条件に、象牙の国際取引が再開され、1999年7月、10年ぶりに象牙約50トンが横浜港から陸揚げされました。
商取引が再開されれば密猟が増加するという懸念を裏付けるかのように、取引再開直後の2000年に、約500キロの象牙の密輸が摘発されました。同年にナイロビで開催された第11回会議では、南アフリカ共和国産のゾウについて、附属書Uへの格下げが決まったものの、日本への本格的な国際取引の再開は、今年11月の第12回チリ会議まで凍結されることになりました。
(11月20日追記)
11月13日付毎日新聞によると、今回のチリ会議で、象牙の国際取引を、最大20トン、1回に限り認めるという、ボツワナが提出した修正案が可決されました。事実上すべての輸出が日本向けで、実際の取引開始は2004年5月以降になるとのことです。
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