タンちゃんの左耳の先がスッパリないのに気付いたとき、息が止まるかと思いました。 そんなはずはない! 暗いから見間違えだろう、何かの加減でそう見えるのだろうと思いました。でも翌朝、朝日の中で見てもタンちゃんのお耳の先はありませんでした。 |
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《いきさつ》 先月の成人の日の夕方、ご近所のYさんが見えられました。 「子連れのねこちゃんがいるの、ご存知ですか?」 「タンちゃんですね?」とうっかり言いそうになるところを踏みとどまって 「白黒の小柄のねこちゃんですよね?」 「子ねこが3匹、それがまた可愛いんでごはんをあげてたんですけどね」 エッ、ということは、タンちゃん、Yさんのお宅には子どもたちを連れて行ってたのね! (…負けた…) 「でも犬猫の嫌いな人もいるからね」 「そうですね、私も子ねこちゃんが居るのは知ってたので、馴れるようだったらウチに入れようかと思ってるんですよ」 「ほんとはそれが良いんでしょうけどね、お宅何匹ですか?」 「6匹です」 「実は避妊手術をしてあげようと思って、ボランティアさんに頼んで捕獲器を仕掛けたんですよ。そうしたら親は捕まったんだけど子ねこが捕まらないの。それで、お宅に来てるかな?と思って」 「ウチにはね、親は来ても子ねこはめったに来ないんですよ(…くやしいけど…)。親が捕まっちゃったから警戒してどこか隠れちゃったんじゃないでしょうか?」 「じゃあ、もう少し待ってみます」 「あの、私でできることがあったらお手伝いしますから」 その晩暗くなると子ねこの鳴き声が聞こえました。どうやら一人になってしまったらしく、ウチのまわりを回りながら大きな声で鳴き続けています。今も捕獲器を仕掛けてあるのならごはんをあげてはまずかろうと思い、Yさんの電話番号を調べてかけてみたのですが、どなたも出られず、あんまり悲痛な叫び声をあげるので、はじめて置き餌をしてみました。食べに来たのはヒゲ模様の子ねこちゃんでした。 何日かヒゲ模様の子だけがごはんを食べに来て、その後もう一人の白黒が一緒に来るようになりました。それからさらに数日後、タンちゃんの顔を見たときはほんとに嬉しかったです。えらかったね、えらかったねと褒めながら次の瞬間凍り付いてしまったのです。 避妊手術をした目印に耳を切るという話は、何年も前にあるシンポジウムで聞いたことはありました。その時も当然是非論が持ち上がったのですが、パネリストの獣医さんの捨て台詞のような一言 「お腹を2度切られるよりはマシでしょ! それにお金だってもったいない!」 に嫌悪感を覚えました。これについてはその当時にもどこかに書いた記憶があるのですが、その年だか前の年だかにのらちゃんの避妊手術に対する市の補助金が増額になったから、また削られないようにどんどん利用しましょうというようなお話もあって、はじめから避妊手術の数だけを見ているような印象の会合でした。 個体識別ができないまま、のらちゃんが増え続けているような地域があるとしたら、そういう方法も仕方ないのかなと思っていましたが、ちゃんと個体識別されているタンちゃんがよもや耳を切られるとは思ってもいませんでした。 Yさんが依頼したのか、ボランティアさんの方針なのかはわかりません。ただ、ウチの近所ではケンカの傷以外で耳が切れているねこさんは見ませんし、美形ちゃんのように手術をしたねこさんでも耳はきれいなままです。先日、ウチのデビたちと同い年のねこちゃんを亡くされた方とお話をする機会があったのですが、その方もタンちゃんを見ながら 「目印に耳を切るなんて知らなかった! 可哀想だよ」とおっしゃっていました。少なくともウチの近所では耳を切ることの共通認識はないようです。 |
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手術の前後で、タンちゃん一家の母子の関係が若干変わったようです。一応タンちゃんがリーダーのようですが、もう子どもたちも小柄なタンちゃんより大きいくらいだし、勝手に子どもだけでごはんを食べに来るときもあります。 |
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そして気が付きました。ヒゲ模様の子ねこちゃん以外は、タンちゃんほどひどくはないのですがやはり耳の先が切られていました。 |
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子ねこたちも少しずつなついてくれて、ことにこの子などこんなふうなのですが(笑)、この子たちはこの先、世に言う「地域ねこ」として生きていくのでしょう。私としてはショックではあったのですが、考えようでは、狭い家の中に閉じこめられて暮らすより、大事にしてくれるお宅を一家で連れ立って訪問しながら暮らす方が楽しいかも、と思い直すことにしました。 |
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という訳で、当面利用者のないケージとトイレですが、どなたか要りますか? でも、この先また思わぬ展開が待ち受けていないとも限らないので、しばらく保管しておきましょう。 |
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最後に一言、ねこさんの心の動きを豊かに表現する耳、不思議な美しいフォルムの耳を無惨に切るのは、やっぱり許せないよー!